その土地ならではのものとの出会い、
佐賀の豊かな自然や歴史と伝統に
人々の熱い想いが作り上げた逸品。
今回は、大平庵酒蔵資料館です。
米と水とわずかな麹菌だけで、かくも豊かで奥深い味と香りを醸し出す日本酒。かつて、酒づくりは杜氏をはじめとした蔵人たちの『人力』に頼っていました。その作業は、米を洗い、水に浸すというような一見単純に思えるものをはじめ、麹づくりといった「酒づくりの要」ともいえるものまで全てが、微妙な時間と温度との戦いの連続でした。
酒の出来、不出来を左右する気の抜けない作業に欠かせないのは、蔵人たちの息の合った動きと、手になじんだ道具でした。道具には、日常使われるものの延長線上にあるもの、酒づくり専用のものなど様々なものがあります。中には独特の名前やユニークな形のものも。木や竹の特性を生かし、工夫され長年使い込まれた道具は、蔵人たちと一体となって酒づくりを支えていたのです。今はもう使われなくなったそれら一つ一つに、酒をわが子のように慈しみ、育んできた蔵人たちの魂が宿っています。
現代に通じる酒作りの技術は、江戸時代に確立されたといわれています。蒸しあげた米で麹(こうじ)をつくり、酵母を加えて発酵させ、もとと呼ばれる酒母をつくります。もとに蒸米、麹(こうじ)、水を加えて仕込み、発酵させます。仕上がった醪(もろみ)を搾れば新酒に、タンクで貯蔵すれば熟成させた酒になるわけです。実にシンプルですが、それだけに気の抜けない作業が続きます。その緊張感は米が蒸される頃から高まっていきます。大釜と甑(こしき)で蒸された米が独特の匂いを辺りに放つと、蔵人たちが自分の持ち場につきます。甑(こしき)の中の米を分司(ぶんじ)で掘り起こす者、強飯掠(こわいかすり)ですくい取る者、ちょうどよい温度に冷ますため蔵に運んでむしろの上に広げる者。呼吸を合わせる作業に機能的な道具は欠かせません。無駄のない動きのために工夫された道具に、全てを手作業でしていた当時の姿がしのばれます。
米研ぎ
精米した酒造米(麹米・もと米・掛米)を足洗い、または手洗いし、その後、吸水させます。
□使用道具 一斗枡ほか
蒸し
酒造米を約1時間蒸し、その後、冷却します。
□使用道具/甑下駄・分司・独楽・強飯掠・せっかんあせりほか
麹つくり
麹用の蒸米を床に広げ、モヤシ(種麹)を散布します。約15時間後、手で揉みほぐして寝かせ、二昼夜で麹が完成です。
□使用道具/もやし振り・室蓋ほか
もと取り
冷水・麹・もと用の蒸米を手でかき混ぜ、すりつぶします。約30日置くと発酵し、生もとができます。
□使用道具/半切・もと桶・暖気樽・冷温器・箒ほか
仕込み
もとに掛米・麹・水を加え、かき混ぜます。約20日で発酵が完了し、醪ができあがります。
□使用道具/試・引掛・五升替・泡巻・泡消・ぽんぽん・泡尺ほか
槽掛け
醪を圧搾し、原酒と酒粕に分けます。原酒は滓引きし上澄酒を汲み取り、ろ過します。
□使用道具/狐桶・待桶・酒袋・阿弥陀車ほか
夏囲い
殺菌と保存性を高めるため、原酒を加熱(=火入れ)。その後、貯蔵し、定期的に少量取り出し、品質管理に努めます。
詰出し
原酒は、味や香りを均一化するため、調合、和水して清酒にします。ろ過した後、甕や樽に詰めます。それらに商標紙を貼り、出荷します。
□使用道具/桶漏斗・ちんちょう・枡乗せ台・徳利・出前箱ほか
木下 治夫館長
良質な米と水、優れた杜氏に恵まれた佐賀は古くから酒造りが盛んで、明治初期には県下に700もの酒造場がありました。時の流れとともに現在は40場に減り、コンピューター制御による酒造りが進むなど技法も大きく様変わりしています。こうした中で私は、杜氏たちが作った昔ながらの用具を後世に守り伝えたいと、昭和40年代で廃業した当酒造の用具一式に県内8ケ所の酒造場から集めた資料を加え、専門家の協力を得ながら「肥前の酒造り用具2334点(国の重要有形民俗文化財指定)というコレクションにまとめあげました。温暖な地方ならではの工夫が生きた諸用具からは、酒造りにかけた蔵人の心意気が伝わってきます。
1.九州自動車道 多久インター下車
2.すぐを右折
3.バイパス203号を小城佐賀方面へ
4.二つ目の信号(宝蔵寺交差点)を右折
5.踏切を越えてつきあたり(別府西交差点)を左折
右前方200m程のところに、「酒蔵」の看板(ここが大平庵酒蔵資料館です)
JR佐賀駅で唐津線に乗り換え、唐津方面へ
1.東多久駅下車
2.駅を背に南へ200m程歩き、最初の交差点を右へ
左前方200m程のところに、「酒蔵」の看板(ここが大平庵酒蔵資料館です)
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取材協力
大平庵酒蔵資料館
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